手術不能だった「卵巣癌」の転帰

種別:卵巣癌性別:女性発症時年齢:67歳

手術不能だった「卵巣癌」の転帰

群馬県在住のM さんは下腹部の不快さを感じて漢方薬を出して貰おうと薬店を訪れました。

しかし、その店の薬剤師は、
「貴女に出す漢方薬はありません、今日中に婦人科を受診してください」
とお話されました。

近くに住む従姉妹を同伴して来られましたので、その従姉妹の方が引っ張るように婦人科に連れて行かれました。


その婦人科で直ぐに検査をしたところ、治療が出来る病院を紹介するとのことで紹介状(診療情報提供書)を書いてくださいました。
翌日、再度、従姉妹に引っ張られて病院を訪れ再検査の結果「卵巣癌を強く疑います」との診断が下されました。
「疑います」だから癌かどうか分からない、たしかにそうかもしれませんが、卵巣癌の多くは卵巣の中に溜まった液体の中に存在します。その為に細胞を調べて癌の判定をすることは出来ません。仮に針を刺せば、その液体の中に浮遊している癌細胞を腹腔内に撒き散らしてしまう可能性があるからです。
従って、卵巣癌の診断は画像診断が中心で腫瘍マーカー等の血液検査は補助的にしか利用できないのです。
そして、確定診断は卵巣を取ってからの生検に委ねるしかありません。
病理医が常勤する病院では手術中の病理(卵巣)迅速生検で癌であるか無いかの判定如何で、リンパ節や子宮の切除をするものなのです。
その後、M さんは手術となったのですが、開腹したところ腫瘍が拡がりすぎて摘出が困難な状態の為に、手術は中断されそのまま縫合されました。
家族や付き添ってくれた従姉妹は術後、医師の説明を聞いて事の重大さに肩を落とすだけでした。


癌治療の最初の関門は手術が出来るか否かです。
開腹しても手出しが出来ないで、そのまま閉じると云うことは決して少なくはありません。
どんなに体外画像診断の機器が良くなっても、患部を直に見るのとは大違いなのです。
執刀した婦人科医は抗癌剤治療を提案しました。
「もし、抗癌剤が効いてくれて、腫瘍が小さくなってくれれば再手術が出来ます」
しかし、その可能性は極めて低いことを医師は知っていました。
その為に、一般的なレジメンとはかけ離れた方法が提案されました。
それは、低用量の頻回療法。これをメトロノミクスと云います。
通常の卵巣癌治療ではTC 療法と呼ばれるタキサン系薬剤にプラチナ系薬剤を混ぜたものを28 日間に1 回点滴して、それを数回繰り返します。
メトロノミクスでは週に1 回を繰り返すのですが、提案されたレジメンでは3 週投与して1週休みの3 投1 休でした。
本来、メトロノミクスは癌休眠療法の一つで癌の成長を緩やかにすることで延命を図る治療です。これで縮小は基本的にはあり得ないものなのです。


M さんは鎮痛剤を規定量の半分で効いてしまい、規定量を飲むと具合が悪くなるタイプの方でしたので、少なめの抗癌剤でも効きすぎてしまい白血球低下のため都合8 回の予定が2 回抜けて6 回しか出来なかったとM さんは嘆いていました。


しかし、画像検査で思いも寄らぬ「再手術」の日程が出されました。

開腹して卵巣、子宮の切除とリンパ節を試験的に数個切除した結果が驚きの結末でした。

「採取した器官の全ての癌細胞は出ませんでした」
「私、癌なんかじゃなかったのですか」とM さん。
「いいえ、そう思いたい気持ちは分かりますが、一番驚いているのは執刀した婦人科の先生でしょう。1 回目の開腹で見たものと2 回目が余りにも違ったので、さぞかし驚かれたでしょうね。そうなるとアジュバント(術後の補助療法)が始まりますよ。治る見込みの無い患者だったのが、今度は完治させることが出来る患者に変わったのですから、アジュバントは手加減なしだと思います」
その予想は的中してしまいました。
アジュバントは1 投3 休の標準治療と決まったのです。
弱い抗癌剤でも白血球低下をしてしまったM さんです、標準治療で骨髄ダメージが無いようにしなければなりません。
減量交渉は全て否決。「副作用が出て減量は考えますが、まだ治療していないうちから減量なんて出来ません」これも当然の答えです。
M さんの副作用は白血球が低下するだけで、いわゆる抗癌剤の苦しみなんて全くありません。
強いて云えば、投与日の翌朝だけ少しムカムカするぐらいです。
そして、4 回のアジュバントも無事に終わりました。
5 年後の2015 年6 月現在も何も変わった様子はありません

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